ウクレレ

ハワイアンコアのグレードについて

    5A ハワイアンコア

ウクレレのオーダーの際にハワイアンコアのグレードについて聞かれることが多いので、今日はその説明をしてみたいと思います。

ハワイアンコアの説明でよく聞く、「3A 」とか「4A」って何の事なんですか?

杢、カーリーなどの説明

いわゆる銘木と呼ばれる木には、木目とは別に「杢(もく)」と呼ばれる模様が見られることがあります。

杢は木の種類によって様々なものがあるので説明がなかなか難しいのですが、多くは木の成長の過程で組織がスクスクと順調に育てず、何らかのクセのようなものが木の断面に現れ、それが美しい模様になったものを杢と呼ばれています。(玉杢、縮み杢、虎杢など。)
英語では杢の入った木を総称して「Figured」とも呼び、カーリー、キルテッド、など様々な種類があります。

セイレン工房でのグレード分け

一般的な量産されているウクレレではそれほど銘木が使われないため、木材のグレードについての表記はあまり見かけませんが、セイレン工房ではカーリーなどの杢入りの木材を使うことが多いので、それらの木を「A」から「5A」の範囲でグレード分けをしています。

実際のSeilenウクレレのモデル名では、例えば「SLC-204」の3桁の数字「204」の一番末尾の「4」の数字が木材のグレードを表しています。
(ちなみに、3桁の一番最初が木材の種類、真ん中がバインディングなどの飾りの種類となります。)

具体的なグレードの説明は以下の通りです。

【カーリーのグレード】
  0:特にグレード分け無し(杢の無い、例えばローズウッドなどの木はすべて0になります)
  1:1A   板目、杢無し。(通常は板目材では製作しませんので、この品番はありません)
  2:2A  ほぼ柾目、杢は無し
  3:3A  部分的に杢が入っている。あるいは全体に薄く杢が見られる
  4:4A  全体に杢あり
  5:5A  全体に深い杢あり

*特別な希少材となりますが、6Aより上のグレードとして「マスターグレード」も稀に存在します。

グレード分けに関する注意点

このグレード分けは特に国際的な取り決め等で決まっているわけではなく、木材を取り扱っている業者や楽器メーカーがそれぞれに決めて便宜的に使っているものです。従って、各会社ごとに判断基準も微妙に違いますし、場合によっては担当者の判断でも変わってきます。

また、杢はあくまで自然のものですので、2Aと3A 、3A と4Aなどの間も厳密に線引きができるわけではなく、最終的にはセイレン工房の主観的な判断で決めさせていただいています。同じ「4A」でも、少し3A寄りの4Aとか、逆に5Aに近い4Aなどがありますのでご理解をお願いします。

 

実は、製作時に塗装前の素材を見てグレードを決定するのはなかなか難しいものなのです。

楽器の製作時(木を削っている時点)に厳密にグレードを判定することはとても難しく、木工工程を終えて塗装が完了した時に初めて実際のグレードが見えてくることがあります。
4Aと指定したのに完成したら3Aに近かった、あるいはその逆などもあり得ます。
カーリーの杢のグレードに拘りたい場合は、楽器店店頭や展示会等で実際の楽器を確認し、オーダーメイドではなくその楽器自体をご購入していただく事をおすすめします。

 

ハワイアンコアの原木

カーリーと音色の関係について

カーリーと音色の関係について質問されることも多いのですが、個人的にはあまり確定的な関係は無いと考えています。
グレードによる音色の差よりも、木のそれぞれの個体差のほうが大きいと感じるからです。

2Aはこういう音、5Aはこういう音色などと断言できるものではなく、どちらかと言えばそれぞれの木の個体差の方が大きいと思っていただいた方が間違いないと考えます。同じ5Aグレードのコアでも硬い木と柔らかい木の個体差はかなりありますし当然音色の差もあります。

強いて言えば、4A〜5Aグレードの杢が深いものは繊維が真っすぐではなく曲がっているために、若干音色が柔らかくなる(深みがある)傾向はあるかもしれません。逆に杢の無い2Aの板は繊維が真っ直ぐで素直に振動するために、力強い音色を感じることが多いように思います。

とは言え、隣り合ったグレードの3Aと4Aの音の違い、などは誰が聞いてもまず分からないと思いますので、グレードの違いは見た目の違い、と理解していただければ良いと思います。
 

☆まとめ
ハワイアンコアの音色の違いは、グレードによる良し悪しよりも個体差による違いの方が大きいが、強いて言えば大きな傾向としては2Aは力強く太い音であり、5Aなどグレードが高く繊維が曲がっているものは木の繊維が柔らかくなるために、多少柔らか目の音になる場合がある。

セイレン工房で育つハワイアンコアの幼木

カーリーコアの希少性について

ハワイアンコアの中でもカーリーコアと呼ばれる部分は伐採した木の数パーセントしかなく、非常に貴重なものです。

コア以外の木でもそうですが、杢の入った美しい木はその希少さゆえ人気を集めて乱獲され、乱獲の結果また個体数が減ってより希少になり価格も上がり、それでもなお入手したい人が捜し求めて伐採し最終的には絶滅してしまう、という事になってしまいます。

現在ハワイ州の所有地にあるハワイアンコアはかなりしっかりした伐採管理がされているようですが、それ故にカーリーコアは年々手に入りにくくなり価格も上がっています。

希少な5A材ばかりを望むのではなく、バランス良く様々なグレードの木を使い、良い楽器を作りたいものですね。
ほどほどの杢のコアでも、それぞれの木はとてもとても美しいものです。大切に使っていきたいと思っています。

-ウクレレ