ウクレレのボディトップ材の木取りをするときには、素材の種類や大きさによって、
1枚板(ワンピース)にする場合と、
2枚剥ぎ(ツーピース)にする場合があります。
ちなみに、ボディのトップの板の事を、「表板」「表甲」、または「響板」「サウンドボード」などとも呼びます。音色や音量を左右する重要な部分ですね。
今回はこのボディトップの木取りと音色のお話しです。
楽器の世界では、2枚剥ぎにする場合には基本的には「ブックマッチ」と呼ばれる木取りの方法を使います。
ブックマッチと言うのは、1枚の板を厚み方向に2枚に挽き割り、本を開くような形で広げて貼り合わせ、木目が左右対称になった板を作る方法です。(下図参照)
幅の狭い板でもブックマッチにする事で倍の幅の板を作ることが出来、別々の板を使うことに比べると色合いや模様を揃えやすい事からテーブルなどの家具の世界でも使われます。
さて、このワンピースとブックマッチの2種類のトップ、楽器に使う場合にはどちらが良いのでしょうか。それぞれの長所短所を考えてみましょう。
【ワンピーストップの特徴】
- 樹齢の高い大径木からしか取れないので貴重で価値がある。
- 剥ぎ合わせ部分の補強が必要無いので振動の妨げが少ない。
- 木の種類や模様にもよるが、幅方向が1枚なのでダイナミックな木目が楽しめる。
- 剥ぎ合わせが無いので後々の剥ぎ割れの心配が無い。
- 幅が広いので右端と左端で素材の材質が多少違ってくる場合がある。(堅さや木目の雰囲気など)
- 1弦側と4弦側とで木質が変わってくるために音質や鳴りを考えた素材の選び方、使い方をする必要がある。
【ブックマッチの特徴】
- 幅の狭い素材からも作れるので木取りがし易い。エコである。
- 剥ぎ合わせ部分に補強をする必要があり、若干だが重くなる。
- 左右対称で使うので木質の偏りが少ない。ボディセンターに対して1弦側、4弦側共に同じ鳴り方、音質となりバランスがとりやすい。
- 木の種類や模様にもよるが、左右対称の木目が独特の美しさを見せてくれる。
このような感じでしょうか。
簡単にまとめれば、
ワンピースは貴重な幅広板を使う豪華さ、希少性。
ブックマッチは経済性と左右対称の模様の美しさ、
などが2つの木取りの違いでしょうか。
もう少し突っ込んだ話をすると、木と言うのは伐り倒す前の状態で見て、外側(樹皮に近い部分)が常に成長していきます。内側の芯に近い部分が最も古い組織です。
ですから、ワンピースでトップ板を作った場合、楽器の1弦側端が若い組織だとすれば反対の端はかなり古い組織なのです。
ブックマッチで作った場合は、中心が若い組織だとすれば外側の端が古い組織となります。(もちろん逆もあります。)
こういった事も考えながら楽器を設計し作って行くのもなかなか面白い、興味深い作業ですね。
さて、ワンピースとブックマッチ。
結論を言えば、「楽器としてどちらが良い」という事は無く、あくまで使う人の好みで選ぶと良いと思います。
楽器選びやオーダーの際の参考にしてみて下さいね。