柿の木のコンサートウクレレ製作記

「自宅庭の、子供の頃から登って遊び親しんでいた柿の木を思い出として残したいので、この木でウクレレを作れないでしょうか?」

という相談をいただいたのが去年の5月。
しばらくして切り倒してあった柿の木を取りに伺ったのが7月。

工房まで運んでからチェンソーを使って四つ割りにして木口に木工用ボンドを塗って割れ止めの処置。
木は丸太の状態で置いておくと断面が急激に乾燥することによって収縮し、木口(こぐち)からひび割れてしまいます。木口面に空気と遮断するためのボンドやワックスなどを塗っておくことでゆっくりと乾燥が進みひび割れを防ぐことが出来ます。

この柿の木、断面の中心付近が黒くなっていたのですが、丸太を預かる時点では木口(断面)しか見えないので、
「何か模様が入っているのかそれとも少し腐ってきているのか、何とも言えないですね。」
と話していたのですがチェンソーで切ってみると腐れはなく、きれいに墨で書いたような模様が見えてきました。それほど派手な模様ではないのですが「黒柿」と呼ばれる貴重な木だったことがわかりました。

中心付近に墨模様が入り、その周りにはうっすらとですが縮み杢(カーリー)が入っています。

4つ割りにした柿の木の含水率はこの時点で40〜50%ほど。

1ヶ月ほど様子を見てから、さらに乾燥しやすくするために5センチほどの厚みに切って自然乾燥。木目が一番きれいに見える方向を考えながら切ります。
途中、人工乾燥に入れるか迷ったけれど、今回は代わりの材料が無い一度きりのチャンス。万が一割れてしまって製作ができなくなると取り返しがつかないので自然に任せて乾燥を進めることにしました。

5ヶ月ほど経って含水率が20%台に下がってきたところで4ミリの厚さに挽き割り、空気が通りやすいように桟積みをしたうえで狂いが出ないように重しをしてさらにシーズニング。
ひと冬の間放置して乾燥し、春先の空気が最高に乾燥する時期を経て、伐採後1年が過ぎた5月から製作を開始しました。

着色などはいっさいせずに製作し、指板上にはご依頼主の家の家紋を入れました。
黒柿の威厳のある雰囲気と、シンプルで美しい家紋が引き立てあってとても良い雰囲気です。自分で言うのもなんですが、なんとなく床の間に飾りたくなるようなウクレレではないでしょうか。

「黒柿」という名前は聞いた事がある方も多いと思いますが、実際は黒柿という種類の柿があるわけではありません。 数百本に1本というような割合で、何らかの原因で普通の柿の木に黒い墨のような模様が入る木があり、その希少さから昔から珍重され大切に使われたのが「黒柿」なのです。

黒柿はその模様の部分に割れが入ってしまう事が多いのですが、今回は伐採後あまり時間が経たない時点で木を預けてもらえたので適切な処置が出来、割れる事無く貴重な木を生かすことが出来ました。

見栄えもさることながら、音色もしっかりとしたコシのある音とキラキラするような高音、そして膨らみのある余韻を合わせ持つ素晴らしい音色に仕上がりました。

100年生きた柿の木が楽器に生まれ変わり、20年30年とまた人々の笑顔の間で共に時間を過ごしていきます。

思い出の詰まった大切な柿の木で楽器を作らせていただけたことをとても嬉しく思っています。ありがとうございました。

末永くご愛用いただき、沢山弾いて可愛がってあげて下さいね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください