力木(ちからぎ)作り

以前ブログで紹介したカナダのマスケッティ島から力木に使う木材が届いたので、少しまとめて力木作りをしました。ソプラノ、コンサート各50台分の合計100セットです。

力木(ちからぎ)って何?どんな役割なの?という方のために少し説明をしましょう。

力木は英語ではBracingと呼ばれるギターやウクレレのボディ内部の部材で、ボディの各部分を補強するという役割と、ブリッジの振動を効率良くボディ全体に伝え音作りをするというふたつの役割があります。

同じボディ材を使っていても、この力木の素材や配置、寸法や形状によって楽器の音色や鳴り方が大きく違ってくる部分で、ギタービルダー、ウクレレビルダーの個性が現れる所でもあります。ビルダー達にとっては大きな悩みどころでもある訳です。

そんな力木は、楽器を内部から長年に渡って支え続ける重要な部材ですから折れたり曲がったりしてしまっては困ります。だからその材料選びには非常に気を使います。

一般的にはその素材としてスプルースが多く使われます。スプルースは松の仲間のトウヒという木で、北米のシトカスプルースや、ドイツのジャーマンスプルースなどが有名です。(ちなみにSeilenウクレレではレッドシダーをよく使います。)こういった針葉樹は夏と冬の成長の早さが大きく違い、春から夏にかけて急激に育った部分が白っぽくなり、秋から冬にかけての成長が遅い部分が濃い茶色となります。それが皆さんもよくご存知の「木の年輪」として現れて来るわけですね。

こうやって成長した針葉樹は、硬くて強い冬目部分を軽くて幅の広い夏目部分がサンドイッチ状に挟んでいるために、全体的には軽量で強度のある素材になります。そのために建築材や楽器など軽さと強さを同時に必要とされる部分に使われるのです。

この針葉樹のもう一つの素晴らしいところは、真っ直ぐにすくすくと成長する事です。いくら軽量かつ強靭な材でも、節くれ立っていたり曲がって育ってはとても使いにくくなってしまいます。標準的なスプルースは真っ直ぐに伸びて樹高30〜40m、直径が1.2mほどにもなるそうです。

こんな素晴らしい性質のスプルースですが、実際は木の真ん中を中心に僅かに捻れて育つ事もあります。近代的な製材機械を使った量産的な加工ではこの僅かな捻れに完全に対応する事が難しく、木の繊維が斜めに切れた状態で製材してしまいます。

ボディの表甲や力木に使う場合にはこの僅かな捻じれによる繊維の目切れが大きな問題になり、強度がかなり落ちてしまうのです。

今回、遥か遠いマスケッティ島から木材を取り寄せたのは、木材業者のGerry が斧と楔を使った手製材をしているからです。ハンドスプリットで割られた板材は木の繊維に沿って割れるので目切れが無く、素晴らしい強度を保つことが出来ます。もちろん木の断面も理想的な柾目に仕上がります。

こういう良い素材を使って作業をしていると、手間のかかる力木作りもそれぞれの工程がとても楽しく進められますね。仕上がった力木を見ていると気分も上がり、写真を撮っていても「おー、可愛い!」などと思ったりします。楽器に使うのが嬉しくて仕方ありません。

ちょっと話が長くなったけど、僕の楽器作りの密かな楽しみの紹介でした。(^^)

スプルース材を斧で割ってみる。

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